【6月15日(木)】
天気は晴れ。
10時半以降に暑くなる太陽の下を歩くのは避けたかった。
だから早朝の4時に起床し、4時25分に出発した。
今日はアストルガまで25kmほど歩く。
途中、バルで休憩を取りながらゆっくり歩こう。
この早朝の出発は失敗だった。
夜明け前の真っ暗な道はもう慣れたけど、巡礼道の矢印、サインがわかりにくいエリアだった。
矢印通りに歩くが、どうも行き詰まってしまう。
maps.meアプリでは、目的地の方向と違う矢じるしの方向だから、本当にこっちだろうか、と悩んだ。
ぐるぐると同じ道を歩きながら考えるが、答えが出ない。
もう、当てずっぽうで矢じるし通りに、ひと気のない方の道を歩いて行こうかとも考えたが、方向があまりにも目的地のアストルガとは違う。
当てずっぽうで歩いて、迷子になってもシャレにならない。
彷徨うほどの体力は持ってない。
私の体力は、巡礼の道を毎日歩くのが精一杯。それも20kmちょっとの距離をなんとか乗り切れるくらい。
迷って5km、10k、とさらに歩くのは無理だろう。
しかも炎天下の中、精神的にも肉体的にもダメージが大きすぎる。
ここは慎重になろう。
もう自分一人では答えは出ない。
一旦アルベルゲの方へ歩いて戻る。
5時頃に同じアルベルゲを出発したドイツ人の男性が歩いてきた。
彼にサインがわからないから戻ってきたと伝えた。
彼は呆れた感じで苦笑。
ほんと、自分でも間抜けかもって思う。
彼もスマホで確認して、しばらく立ち止まり考え込んだ。
そして、私と同じ道を歩いて、しばらく黙って考えいた。
私は彼がどう決めるのか後ろで待った。
彼は、「こっちだ」と答えが出た。
二つの矢じるしがあるから迷ったのだけど、最終的に道路沿いを歩く道を選んだ。
この道路沿いを歩くのね。
彼の自信を持った決断に、私も後からついて歩いた。
他に巡礼者がいないし、今までのような巡礼の道とは違う雰囲気のエリアで、サインの立て方もちょっと違和感が合ったけど、結局この道で合っていた。
後ろを振り返れば、日の出が始まっていた。
ドイツ人は歩幅も大きく、歩くのも早く、あっという間に見えなくった。
また矢じるしがわかりにくいところがあり、
矢じるし通りにまっすぐ進むのか、左へいくのか迷った。
後ろからは女性の巡礼者二人組がいた。
私は、まっすぐ行くことにした。
すると、後ろから「左よー」って声をかけてくれた。
彼女たちは左へ歩いて行った。
私も左へ行く。
危ない危ない。
わかりやすい道標ばかりとは限らないのね。。
綺麗な街に入った。
バルでトイレを借りたら、先ほど道を教えてくれた女性ふたりがカフェで休憩していたので、「さっきはありがとう」とお礼を言った。
この後のカフェのテラス席で、ドイツ人の男性が休憩していた。
彼にも「今日は道を教えてくれてありがとう」とお礼を伝えた。
Leonのアルベルゲと、昨晩のアルベルゲが一緒で、恋人と歩いていた彼は、
Leonで恋人の休暇が終わり彼女は仕事のためドイツへ帰国。
彼はLeonから一人で歩くそうだ。
前から二人の男女が歩いてきた。
巡礼の格好だけど、逆方向を歩いている。
まず彼の方と「ブエンカミーノ」と挨拶。
続いて彼女の方と挨拶。
すると彼女が私に向かってまっすぐ歩いてきて、
「彼がハンガリーに帰らないといけないの。食べ物かコインを少し頂けないか」と言ってきた。
とてもオシャレで美人な20代の彼女だった。
優しそうな目なのに、浮かない表情だったのはお金に困っているからなのか。
「え?」と思って彼女の顔を見る。
また彼女が「コインを少し頂きたい」と言う。
私が逆の立場なら、言うだろうか。。。
なんで彼氏が帰国するからコインが必要?
小銭入れから、数枚のコインを手渡す。
彼女はありがとうと笑顔で大きな声で言った。
「God bless you!!!」と振り向きながら私に向かって言った。
初めて言われた。ゴッドブレスユー!って。。。
でも彼女がものすごく喜んでたから、いいことをしたのだろう。
バルでオレンジジュースを飲んだ。店内はなぜかハエだらけだったのでくつろげず。
すぐにバルを出た。
今度は清潔そうなバルがあった。
マダムが掃除をこまめにしている。
ここでコーヒーを飲んで、先ほどのハンガリーのカップルのことを思い返す。
三ヶ月の旅、まずはスペイン巡礼からスタートしている。
お金が足りなくなることはない。
しっかり計画してきた。
スペイン巡礼は、アルベルゲという安い値段で泊まれるし、その後の二ヶ月の旅の宿はホステルを予約済みで、安くて綺麗そうなホステルを選んだ。
私は日本から持ってきていた行動食(とろろ昆布、煮干し、海苔)や、
途中で買っていつか食べるかもと思い持ち続けているビスケット、
調子が悪くなったら飲むつもりのターメリックパウダーがザックに入ったまま。
使わないのに、ザックに入れている。
もういい加減、捨てようよ。
そう自分で自分に心の中で言った。
寒かったら風邪をひかないようにと食べ物も持ち歩けばいいけれど、
想定外の暑さだし、風邪を引くこともなさそう。
バルのゴミ箱に、バサバサと捨てた。
乾燥した食べ物をいくつか捨てただけなのに、ものすごくザックが軽くなったように感じた。
そして、気分までも軽くなったから不思議。
休憩もできたし出発。
まだ先は長い。
アストルガまで残り5km。
韓国から来た女性のチョンさんと、ドイツ人のディレックさんがテラスで
ビールを飲んで休憩していた。
チョンさんとは、3回目の再会。
初めて見かけたのは一週間前。その時は、別の韓国人男性と女性の3人で歩いていた。
彼らとは別々に歩き出したようだ。
私もビールを注文して休憩した。
ディレックさんは結婚してお子さんもいるけれど、ブラジルに在住。
スペイン巡礼が終わったら、ドイツにいる家族に会うのが楽しみと話していた。
そこにヴァレリーも歩いてきて合流。
四人でアストルガまで残り5kmを歩いた。
公営アルベルゲで受付をする。
勝手に部屋を割り当てられるシステムで、ヴァレリーは個室をもらえてラッキー。
白髪のおじさんがオスピタレロ。
韓国の巡礼者は多く、このアルベルゲでもたくさんいた。
高台の上に城壁に囲まれた街。
パンプローナを思い出す。
公園には花と緑が綺麗で、芝生の上でヨガも出来た。
街を散策。
ジェラートも食べた。
ガウディの建物。
その前で記念写真を撮ってもらった。
アストルガ司教館 - Wikipedia
アストルガ - Wikipedia
アストルガの大聖堂。
中には入れなくて残念だったけれど、外観は巨大でかっこいい。
これを観れただけでも嬉しかった。
アストルガの街の中心で、バルのスツールに座っている小さな東洋人のおじいさんを発見。
70代のSさんだった。(6回目の再会)
また会ったねと挨拶。
ご飯に一緒に行くか聞いたら、もう食べたとのこと。
Sさんはヴァレリーやチョンさんに冗談を言って笑わせてくれた。
スーパーに行って、明日の朝食や行動食を買った。
ディレックが予約してくれたプルポ(タコ料理)が食べれるレストランへ行った。
こんな素敵なレストランだったのか。
スタッフの接客、笑顔が気持ちいい。
美味しいディナーだった。
巡礼スタイルの服装で来店するのがちょっと恥ずかしいほどだったけど、そんなことは気にしなくてもいい大らかなお店だった。
スペインの田舎の、お高くとまっていない人柄、優しく自然な笑顔は、巡礼が愛されている理由の一つだと思う。
【アルベルゲ】
・5ユーロ
当時の日記です。
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